2021年度 第21回本格ミステリ大賞

【小説部門】『蝉かえる』櫻田智也(東京創元社)
【評論・研究部門】『数学者と哲学者の密室 天城一と笠井潔、そして探偵と密室と社会』飯城勇三(南雲堂)

 

5月14日開票の結果、大賞が以下の通り決まりました。候補作の獲得票数は以下の通り。
※従来「ジャーロ」にて掲載していた選評は今後別の媒体に移る予定ですが、現時点では詳細が決まっておりません。具体的なことが決定しましたらお知らせします。

【小説部門】有効投票数 63票
『蝉かえる』櫻田智也(東京創元社) 21票
『欺瞞の殺意』深木章子(原書房) 17票
『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』辻 真先(東京創元社) 14票
『透明人間は密室に潜む』阿津川辰海(光文社) 8票
『楽園とは探偵の不在なり』斜線堂有紀(早川書房) 3票

【評論・研究部門】有効投票数 23票
『数学者と哲学者の密室 天城一と笠井潔、そして探偵と密室と社会』飯城勇三(南雲堂) 9票
『本格ミステリの本流 本格ミステリ大賞20年を読み解く』南雲堂(編)(南雲堂) 6票
『シンポ教授の生活とミステリー』新保博久(光文社文庫) 5票
『書きたい人のためのミステリ入門』新井久幸(新潮新書) 3票
『真田啓介ミステリ論集 古典探偵小説の愉しみ Ⅰ・Ⅱ』真田啓介(荒蝦夷)(こちらの作品に関しての詳細

受賞の言葉

  櫻田智也
 完成した絵の外側にピースが何片か余るような。もしかしたらそのピースの嵌まる場所が、まだどこかにあるかもしれないような。探偵役の推理の対象が、理解しきることのできない誰かの心である以上、そんなパズラーにならざるを得ませんでした。本格ミステリと認めて評価いただき、誠にありがとうございます。殊勝な物言いに隠した、はしたないほどの悦びを、わが探偵・魞沢 泉(えりさわ せん)にあばかれずに済むのは作者の役得であり、幸いです。

  飯城勇三
 このたび、一度でも光栄な〈本格ミステリ大賞〉を三度もいただき、喜びと興奮を感じています。票を投じてくれた皆さんには、あらためてお礼を申し上げます。ただし、今回の受賞に関しては、私の実力だけではありませんでした。本書は、天城一さんと笠井潔さんが書いたすばらしい作品の数々と書簡がなければ、受賞はできなかったでしょう。このお二人には、心から感謝します。そして、『本格ミステリ戯作三昧』に続いて、またしても風変わりな本を出してくれた南雲堂の星野氏にも感謝の言葉を。次作『本格ミステリの構造解析』も、よろしくお願いします。最後に、私の本を読んでくれた方々にお礼を。この本がきっかけになり、天城作品や笠井作品に手を伸ばしてくれたら、あるいは、新たな魅力を感じてくれたら、作者としてはこの上ない喜びです。