「本格ミステリ作家クラブ通信」第96号

1.第26回本格ミステリ大賞候補作決定

【小説部門】(著者名50音順)
『抹殺ゴスゴッズ』飛鳥部勝則(早川書房)
『夜と霧の誘拐』笠井潔(講談社)
『神の光』北山猛邦(東京創元社)
『刹那の夏』七河迦南(東京創元社)
『探偵機械エキシマ』松城明(KADOKAWA)

【評論・研究部門】(著者名50音順)
『岩箱』植松二郎(龜鳴屋)
『松本清張の女たち』酒井順子(新潮社)
『GIRLSNOIRガールズ・ノワールハードボイルドよりも苛烈な彼女たちのブックガイド』霜月蒼(左右社)
『謎ときエドガー・アラン・ポー知られざる未解決殺人事件』竹内康浩(新潮社)
『古典文学探偵譚集成』松井和翠(個人誌)

 第26回本格ミステリ大賞候補作決定のための予選会は2月11日に、大賞運営委員・イクタケマコト、霧舎巧、福井健太の立ち会いのもと、予選委員・孔田多紀、稲羽白菟、伊吹亜門、蔓葉信博、汀こるものによってリモート会議の方式で行われた。

■選考経過

【小説部門】
 予選委員が挙げた推薦作は、飛鳥部勝則『抹殺ゴスゴッズ』、大山誠一郎『死の絆 赤い博物館』、笠井潔『夜と霧の誘拐』、霞流一『スカーフェイク 暗黒街の殺人』、北山猛邦『神の光』、紺野天龍『聖女の論理、探偵の原罪』、櫻田智也『失われた貌』、新川帆立『目には目を』、七河迦南『刹那の夏』、野島夕照『片翼のイカロス』、松城明『探偵機械エキシマ』、山口未桜『白魔の檻』の十二作品だった(著者五十音順)。
 最初に予選委員全員が推薦した『夜と霧の誘拐』が候補作に決まった。本格ミステリの面白さについては文句がないというのが一致した意見だった。四人の予選委員が推した『神の光』は本格度と幻想味の比重について見解が分かれたものの、『夜と霧の誘拐』同様、本格ミステリとしての面白さは疑いようがなく、票を投じなかった委員からも「候補作とすることに反対するものではない」との言葉が聞かれ、二つ目の席を得た。
 続いて、三人の予選委員が推薦した『失われた貌』『探偵機械エキシマ』、二名が推した『スカーフェイク 暗黒街の殺人』『抹殺ゴスゴッズ』の検討に入った。『スカーフェイク――』については作者の過去作との比較が議論の中心となり、ほかの三作品は「本格ミステリとして評価しなくても面白い作品」「本格ミステリ大賞で評価されるにふさわしい作品」「本格ミステリであることを世に示したい作品」などの声が聞かれ、本格であること(というより本格ミステリ大賞であること)が強く意識された予選会になった。そんな中で『失われた貌』に票を入れていた委員がその一票を『刹那の夏』に移したため、『刹那の夏』も複数票を得た作品として検討の輪に加わった。ここでも本格ミステリの視点と、小説の面白さの比重が争点となり、議論は熱を帯びた。すると今度は『スカーフェイク――』を推していた委員二名がそれぞれ『探偵機械エキシマ』と『刹那の夏』に票を移動させたため、この時点で『スカーフェイク――』が選考から外れた。同時に、四票獲得となった『探偵機械エキシマ』が反対意見もなく候補作に決まった。
 このあと、推薦者が一名だけの作品について、各委員が推す理由、推せない理由を挙げ、先に検討されていた三作品と併せて全八作品の中から二作品を選出する流れになった。予選会が始まってから二時間が経とうとしたころ、何度目かの票の移動が行われ、最終的に『抹殺ゴスゴッズ』『刹那の夏』が候補作に選ばれた。今回は第 23 回の予選会以来、多数決を用いない話し合いでの決着を見た。(霧舎巧)

【評論・研究部門】
 五名の選考委員が事前に挙げた推薦作は、竹内康浩『謎ときエドガー・アラン・ポー 知られざる未解決殺人事件』、霜月蒼『GIRLS NOIR ガールズ・ノワール ハードボイルドよりも苛烈な彼女たちのブックガイド』、杉江松恋 編著『名探偵と学ぶミステリ 推理小説アンソロジー&ガイド』、酒井順子『松本清張の女たち』、藤井淑禎『松本清張と水上勉』、植松二郎『岩箱』、野本瑠美『父、正史 母、孝子 日本ミステリの巨匠・横溝正史と家族、仲間、そして末娘』、藤脇邦夫『松本清張の深層心理 隠された潜在メッセージ』、松井和翠『古典文学探偵譚集成』の九作であった。
 投票先の修正が行われた後、満票を得た『謎ときエドガー・アラン・ポー 知られざる未解決殺人事件』と『GIRLS NOIR ガールズ・ノワール ハードボイルドよりも苛烈な彼女たちのブックガイド』がまず候補作に決定した。前者はポー研究としての掘り下げの深さと実証性が、後者は新しいコンセプトと独自の着眼点で作品世界を再構成した点が高く評価された。この段階で票を伸ばせなかった『父、正史 母、孝子 日本ミステリの巨匠・横溝正史と家族、仲間、そして末娘』は候補から外れた。続いて得票数の多かった『松本清張の女たち』と『古典文学探偵譚集成』について議論が交わされた。前者は 数多い松本清張論の中でも新たな視点を提示した点、後者は古典作品をミステリとして捉え直す試みが評価され、それぞれ候補作に決定した。さらに残る作品について全選考委員がコメントを述べた。『名探偵と学ぶミステリ 推理小説アンソロジー&ガイド』は入門書として読者層の拡大に寄与している点、『松本清張と水上勉』は両作家論の堅実さ、『松本清張の深層心理 隠された潜在メッセージ』は評論と読み物としての充実、『岩箱』は寡作な作家に光を当てた意義がそれぞれ評価された。議論の結果を踏まえて票の移動が行われ、『松本清張の深層心理 隠された潜在メッセージ』と『岩箱』が候補に残り、評伝作品や限定部数という条件を越えて広く読んでほしいとの想いで『岩箱』が選出された。(イクタケマコト)

■選評

◎孔田多紀
 初めて選考会に臨みました。自分なりに「本格ミステリとは何か」という軸についてふだんから考えていたつもりでしたが、悩みましたねえ。小説なら、まず長篇か短篇集か。短篇集なら、独立か連作か。作者の過去作と比べてどうか……一個人としてふつうに投票するのと比べ、これほど感覚が異なるとは! 事前の予想とは大きく変わった候補作群となり、驚きました。特に【小説部門】はだいぶ混戦しましたね。僅差で推しきれなかったものもあり、何度か熟考や態度変更を迫られました。対して【評論・研究部門】は比較的スラスラと自分の考えを述べることができました。入手困難本を推薦することに迷いもありましたが、そうした評論こそ評価の機会が少ないこともあり、ぜひ投票者の皆様にお読みいただければと、つい粘り腰に。結果的に両部門とも、意外性とバラエティに富んだかたちになったのではないでしょうか。結果を待望しております。

◎稲羽白菟
 小説部門では今年も以下二つの基準をもって選考に臨みました。①本格ミステリとしての企み・構造に膝を打つような達成があること。②本格ミステリを目的に留めず、それを手段にした良い「小説」であること。その基準において優れていると考えるのに候補に残せなかった作品があります。また、僕の基準では積極的に残そうとは思えないけれど候補に残った作品もあります。しかし異存はありません。様々な視点がある中、議論をし、他の選考委員の見識も信用して候補を決めるのが予選会であり、そして、投票で大賞を決するのが本格ミステリ大賞なのですから。評論・研究部門では「入手困難本を候補に採るべきか」ということが最大の議論となりました。僕も本当に悩みました。しかし、そんな配慮によって我々が良書をふるい落としてどうするのかと結論しました。「入手不可能」でないことは確認済です。騙し上手・騙し好きの皆様、騙されたと思って是非ご一読を。

◎伊吹亜門
 今年から予選委員を務めます。宜しくお願いします。
 【小説部門】推薦作に挙がった時点で優れたミステリであることは間違いなく、そこから更に甲乙を付けるためには、やはり小説的な技巧よりも本格ミステリとしての完成度を考慮すべきだとの立場で予選会に臨みました。その結果、強く推そうと考えていた『探偵機械エキシマ』『抹殺ゴスゴッズ』『刹那の夏』を最終候補作に残すことが叶い、個人的には満足しています。
 【評論・研究部門】その内容が紹介に留まらず、評論や研究にまで及んでいるかを評価軸に検討しました。おおよそ異論のない結果となりましたが、『松本清張と水上勉』を推し切れなかったことが心残りです。木々高太郎から松本清張に送られた直筆手紙に関わる指摘には思わず膝を打った一方で、これはむしろ〈小説部門〉で評価して然るべき〝推理〟なのではないかという思いもあり、この部門での選考の難しさを実感しました。

◎蔓葉信博
 昨年の予選以上に本格ミステリの「本格」とは何かという魔物が水面下に潜む選考となりました。「本格」の定義に必要とされるフェアネス、手がかり、論理性などの用語の範囲が個々人で少しずつ異なっていて、それはここ十数年の本格ミステリの物語的拡張・多様化に対し、そうした定義論の用語が部分的にであれ、経年劣化を起こしているからなのではと感じました。物語的拡張・多様化の例として考えていた『探偵機械エキシマ』が選ばれたのはよかったのですが、一方で『失われた貌』が候補から落ちたことは少々ショックだったからです。ただ評論・研究部門で古典の再解釈から補修ならぬ大工事を行う『謎ときエドガー・アラン・ポー』が選ばれたのは幸いでした。とはいえ「評論・研究」の市場性・歴史性など、こちらは「本格」とは別の事情も勘案しながら検討を迫られる非常に悩ましい議論でした。本選がどのような結果となるのか楽しみにしております。

◎汀こるもの
 そりゃあ『夜と霧の誘拐』は入るだろうよ! 小説部門では23年ぶりの笠井潔、レイドボスの趣です。『抹殺ゴスゴッズ』とこれと、平成みたいなレンガ本が …… 今年は何年ですか? 最近は多重解決ブームかと思ったけど傾向がバラケました。『神の光』と『刹那の夏』はどちらも詩情たっぷりの短編集で、逆にノレない人はキツいのかな。本格なんだから奇想や仕掛けを重視してしかるべきだけど、私は詩情も両立するならその方がいいと思います。『探偵機械エキシマ』もありますよ、詩情。
 評論・研究部門は三作も松本清張が出てきて「松本清張の当たり年か?」となったけど何でや …… 米倉涼子の炎上しか知らん ……『ガールズ・ノワール』と『松本清張の女たち』は女性キャラクター論で、特に後者は高齢独身女性当事者として推すべし!でした。去年の私は評論部門がボロボロでしたが、『謎ときエドガー・アラン・ポー』は読みやすくて正直助かりました。マジで。

【候補作アンケート】

44通
*31→33→42→36→35→37→30→30→27→30→27→39→36→34→31→36→40→44 ※昨年より増。

【アンケート結果】(著者50音順)

◎小説部門
『千年のフーダニット』麻根重次(講談社)
『抹殺ゴスゴッズ』飛鳥部勝則(早川書房)
『最後のあいさつ』阿津川辰海(光文社)
『我孫子武丸犯人当て全集』我孫子武丸(星海社)
『そして少女は、孤島に消える』彩坂美月(双葉社)
『さよならジャバウォック』伊坂幸太郎(双葉社)
『エレガンス』石川智健(河出書房新社)
『もつれ星は最果ての夢を見る』市川憂人(PHP研究所)
『午前零時の評議室』衣刀信吾(光文社)
『路地裏の二・二六』伊吹亜門(PHP研究所)
『死の絆 赤い博物館』大山誠一郎(文藝春秋)
『電報予告殺人事件』岡本好貴(東京創元社)
『ライアーハウスの殺人』織守きょうや(集英社)
『夜と霧の誘拐』笠井潔(講談社)
『スカーフェイク 暗黒街の殺人』霞流一(原書房)
『ポルターガイストの囚人』上條一輝(東京創元社)
『神の光』北山猛邦(東京創元社)
『ひとつ屋根の下の殺人』酒本歩(原書房)
『失われた貌』櫻田智也(新潮社)
『キャンプをしたいだけなのに 雪中キャンプ編』山翠夏人(TOブックス)
『名探偵再び』潮谷験(講談社)
『誘拐劇場』潮谷験(講談社)
『狼少年ABC』梓崎優(東京創元社)
『伊根の龍神』島田荘司(原書房)
『目には目を』新川帆立(KADOKAWA)
『神探偵イエス・キリストの回想 逆襲のユダ』清涼院流水(星海社)
『今日未明』辻堂ゆめ(徳間書店)
『巌窟の王』 友井羊(光文社)
『刹那の夏』七河迦南(東京創元社)
『わたしがいなくなった世界に』七河迦南(東京創元社)
『霊感インテグレーション』新名智(新潮社)
『双死相殺 腕貫探偵リバース』西澤保彦(実業之日本社)
『奇想怪談×天外推理 今日も彼女と”溜息”のオカルト研究会』久青玩具堂(マイナビブックス)
『コージーボーイズ、あるいは四度ドアを開く』笛吹太郎(東京創元社)
『名探偵たちがさよならを告げても』藤つかさ(KADOKAWA)
『百年の時効』伏尾美紀(幻冬舎)
『アミュレット・ワンダーランド』方丈貴恵(光文社)
『食刻』柾木政宗(講談社)
『探偵機械エキシマ』松城明(KADOKAWA)
『朝からブルマンの男』水見はがね(東京創元社)
『寿ぐ嫁首 怪民研に於ける記録と推理』三津田信三(KADOKAWA)
『謎屋珈琲店 21番目の挑戦』峰月響介(河出書房新社)
『消失村の殺戮理論』森晶麿(星海社)
『探偵小石は恋しない』森バジル(小学館)
『罪の棲家』矢樹純(朝日新聞出版)
『白魔の檻』山口未桜(東京創元社)
『降り止まぬ雨の殺人』床品美帆(東京創元社)
『まぐさ桶の犬』若竹七海(文藝春秋)
※予選委員推薦作
『聖女の論理、探偵の原罪』紺野天龍(早川書房)
『片翼のイカロス』野島夕照(光文社)

【評論・研究部門】
『岩箱』植松二郎(龜鳴屋)
『日本サブカルチャーと危機』押野武志ほか編著(北海道大学出版会)
「『私立探偵マニー・ムーン』リチャード・デミング、ほか新潮文庫の海外ミステリ作品巻末の著作リスト制作に対して」川出正樹(新潮社)
『松本清張の女たち』酒井順子(新潮社)
『ガールズ・ノワール ハードボイルドよりも苛烈な彼女たちのブックガイド』霜月蒼(左右社)
『死体置場で待ち合わせ』新保博久・法月綸太郎(光文社) ※範囲外
『名探偵と学ぶミステリ 推理小説アンソロジー&ガイド』杉江松恋(早川書房)
『乱歩賞作家の創作術』高野和明(講談社)
『謎ときエドガー・アラン・ポー 知られざる未解決殺人事件』竹内康浩(新潮社)
『刑事コロンボとピーター・フォーク その誕生から終幕まで』ディヴィッド・ケーニッヒ(原書房)
『父、正史 母、孝子日本ミステリの巨匠・横溝正史と家族、仲間、そして末娘』野本瑠美(KADOKAWA)
『松本清張と水上勉 』藤井淑禎(筑摩書房)
『幽霊の脳科学』古谷博和(早川書房)
『言葉だけが最後に残る』鷲羽巧(自費出版)
※予選委員推薦作
『松本清張の深層心理 隠された潜在メッセージ』藤脇邦夫(幻冬舎)
『古典文学探偵譚集成』松井和翠(個人誌)

2.今後の予定

3月31日(火) 新会長、新執行役員推薦、立候補締切
5月07日(木) 第26回本格ミステリ大賞投票締切
5月11日(月) 第26回本格ミステリ大賞発表 クラブ公式X
6月27日(土) 総会&贈呈式 @都内某所
6月28日(日) 受賞記念イベント&サイン会 @芳林堂高田馬場店(東京・高田馬場)
※日程は暫定的なものです。

4.新入会員、退会会員

【新入会員】

□犬塚理人(いぬづか・りひと) [関根亨/稲羽白菟=推薦]
自己紹介:1974年大阪府生まれ。『人間狩り』で第38回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞してデビュー。一応、横溝賞出身ということで好きな本格作品は『獄門島』とさせてください。どうぞよろしくお願いいたします。
推薦理由:推薦理由:裁判員制度や安楽死といった現代社会の倫理的課題を正面から扱い、重厚な社会派ミステリに取り組んでこられた実作者です。人間の尊厳と正義の狭間で揺れる登場人物を通じて深い思索を促す作風が持ち味であり、また近年は本格ミステリの方法論も積極的に取り入れ、新たな本格への意志をお持ちの方です。(稲羽白菟)

□酒本歩(さかもと・あゆむ) [関根亨/稲羽白菟=推薦]
自己紹介:島田荘司選 第11回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞、第3回かつしか文学賞優秀賞を受賞。既刊は『幻の彼女』『幻のオリンピアン』『ロスト・ドッグ』『ひとつ屋根の下の殺人』。お酒と本とウォーキングが大好きなので酒本歩です。よろしくお願いします。
推薦理由:継続的に作品を発表し、近作では読者が謎解きに参加しやすい本格ミステリの形式を提示するなど意欲的な実作者です。また、SNSなど多様な場での読者との積極的な対話を重視され、本格ミステリの魅力を広く読者と共有しようとする姿勢が際立つ書き手のお一人です。(稲羽白菟)

□白木健嗣(しらき・けんじ) [関根亨/稲羽白菟=推薦]
自己紹介:1989年三重県四日市市生まれ。2021年『ヘパイストスの侍女』で第14回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞。翌年、同作を改稿してデビュー。既刊は『抜け首伝説の殺人〜巽人形堂の事件簿』。好きな本格ミステリは東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』です。普段はIT業界でエンジニアをしています。よろしくお願いいたします。
推薦理由:AI技術を扱う警察ミステリから妖怪伝承を題材とする伝奇ミステリまで、多彩なモチーフを本格の枠組みで描く柔軟性が魅力の実作者です。丁寧な文章と現代的な題材への感度が光り、ジャンルに新鮮な風を吹き込む新世代の書き手の一人になられることが想像されます。(稲羽白菟)

□辻寛之(つじ・ひろゆき) [関根亨/稲羽白菟=推薦]
自己紹介:1974年富山県生まれ。2018年第22回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞。受賞作を改題した『インソムニア』でデビュー。他の著書に『エンドレス・スリープ』、『麻薬取締官・霧島彩』シリーズ、『終末のアリア』がある。
推薦理由:『インソムニア』『エンドレス・スリープ』から麻薬取締官シリーズへと継続的に作品を発表し、確かな取材力とプロット構成力を示す実力派の実作者です。シリーズ展開を通じて物語世界を着実に深化させる構築力は、今後本格ミステリのフィールドでも大いに活かされることが想像されます。 (稲羽白菟)

【退会会員】

□山前譲 1月29日ご逝去のため

(2026.03.03発行)

「本格ミステリ作家クラブ通信」第95号

1.第25期総会・第26回「本格ミステリ大賞」贈呈式までのスケジュール

・25年12月1日(月)第2回執行会議(会報確認、クラブ25周年記念イベント振り返りなど)
・25年12月5日(金)推薦作アンケートフォーム(Googleフォーム)配布
・26年1月8日(木)23時59分大賞アンケート締め切り
・26年2月中旬 予選会
・26年2月中旬 大賞候補作発表・投票開始(Googleフォーム)
・26年2月下旬 第3回執行会議(予選委員会の反省、開票スケジュールの確認、会報確認、アンソロジー確認など)
・26年5月7日(木)投票締め切り
・26年5月上旬 第4回執行会議(大賞発表の手筈確認など)
・26年5月11日(月)クラブ公式サイトにて大賞作発表
・26年6月中旬 アンソロジー『本格王2026』刊行
・26年6月27日(土)第5回執行会議(総会、贈呈式の手筈確認など)
          総会、賛助会員説明会、贈呈式・祝賀会
・26年6月28日(日)大賞記念トークショー&サイン会(@芳林堂書店高田馬場店)

3.創立25周年記念大阪イベントの報告

 2025年10月13日(月・祝)、OIT梅田タワーにて「本格ミステリ作家クラブ25周年記念トークショー&サイン会」が13時30分より行われた。開催協力は紀伊國屋書店梅田本店。
 イベントはまず初代会長・有栖川有栖による来場者への挨拶で始まり、続いて3つのテーマによるトークショーを行った。
 パネル①は「歴代会長が振り返るクラブ25年史」(司会:福井健太)。有栖川有栖、北村薫、法月綸太郎、東川篤哉、麻耶雄嵩の歴代会長経験者5名が登壇し、創立から現在に至るまでの思い出を語った。パネル②は「プロ作家デビューまでの道のり」(司会:若林踏)。太田忠司、黒田研二、水生大海、織守きょうや、今村昌弘と、デビュー経緯や世代が異なる5名の登壇者が作家になるまでの裏話を披露した。パネル③は「本格ミステリ表裏ベスト」(司会:佳多山大地)。法月綸太郎、有栖川有栖、大山誠一郎、東川篤哉、潮谷験が「名探偵」「密室」「クローズド・サークル」など8つのキーワードに沿って各々の表ベスト作品・裏ベスト作品を紹介した。パネル③終了後、トークショーの締めくくりとして麻耶会長が来場者への挨拶を行い、サイン色紙の抽選会を実施。その後17時30分過ぎより同会場にて、イベント登壇者12名によるサイン会を行った。
 当日の来場者数は208名。イベント終了後には「貴重なお話をリアルで聞くことが出来て良かった」「(特にパネル③について)読みたい本が増えました」などの反応がSNS上では確認できた。サイン会の最中には「こんなイベントを開催いただきありがとうございました」との意見を直接、書店担当者に伝えた来場者もいたという。
 なお、イベントの模様については東京創元社『紙魚の手帖vol.27』(2026年2月発売)にレポート記事の掲載を予定している。
※当日の運営について、賛助会員出版社10社(15名)の皆様にサイン会サポートなどでご協力いただきました。イベントが成功するよう運営にお力添えいただいたこと、改めて御礼申し上げます。
(イベント担当:若林踏)

5.新規会員・退会会員紹介(敬称略)

[入会]

・逸木裕(いつきゆう)……推薦:芦辺拓/関根亨
【職業】作家
【自己紹介】1980年東京都生まれ。ウェブエンジニア業の傍ら小説を執筆、2016年に『虹を待つ彼女』で第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。主な著作に『五つの季節に探偵は』『彼女が探偵でなければ』『風を彩る怪物』『銀色の国』など。好きな本格作品はクリスチアナ・ブランド『ジェゼベルの死』、アントニー・バークリー『試行錯誤』、鮎川哲也の諸作、連城三紀彦の諸作、服部まゆみ『この闇と光』、加納朋子『ガラスの麒麟』、光原百合『時計を忘れて森へいこう』、米澤穂信『真実の10メートル手前』など。
【推薦の理由】逸木裕氏は2025年、第25回本格ミステリ大賞を『彼女が探偵でなければ』で受賞されました。
受賞スピーチで述べられた「人間の謎を追求」も本格ミステリ作家クラブ会員にふさわしく推薦する次第です。(関根亨)

・君野新汰(きみのあらた)……推薦:陸秋槎/関根亨
【職業】作家
【自己紹介】富山県生まれ。金沢大学医学部卒業後、10年ほど精神科医として病院勤務。2024年、『このミステリーがすごい!』大賞にて最終選考に残り、2025年6月、同賞隠し玉『魔女裁判の弁護人』にてデビュー。敬愛する作家は竹本健治先生。好きな本格作品はクリスティ、クイーンの諸作。今年デビューしたばかりの若輩者ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
【推薦の理由】君野氏のデビュー作『魔女裁判の弁護人』が本格推理、歴史考証、そしてファンタジー要素を織り交ぜた野望の一作。すべての設定がけして推理のために存在しなければならないかのようなこの時代に、怪奇幻想ミステリーの伝統を受け継ぐ作家を応援したい。(陸秋槎)

・倉野憲比古(くらののりひこ)……推薦:三津田信三/若林踏
【職業】作家
【自己紹介】これまで「私は変格派だ!」と独り叫んでまいりましたが、拙作を読んだ方からは「倉野は意外と本格ミステリだよねえ」という意見をよく頂戴するようになりました。実は私も理想の本格ミステリについて「こうあるべき」というスタイルを持っておりましたが、本格への愛情をこじらせてしまって、変格に自分をことさら追い込んでいたきらいも無きにしも非ず、なのです。最近、こじらせがようやく治まり、本格ミステリと真っ正面から取り組んでみたくなりましたので、本格ミステリ作家クラブに入会を希望する次第です。よろしくお願いいたします。
【推薦の理由】ご本人は変格ミステリ作家だと仰っていますが、お作を読むと本格ミステリ魂をお持ちだと分かりますので、当クラブに推薦します。(三津田信三)

・三日市零(みっかいちれい)……推薦:坂嶋竜/関根亨
【職業】作家
【自己紹介】1987年福岡県生まれ、埼玉県在住。慶應義塾大学卒業。2023年、第21回このミス大賞・隠し玉として『復讐は合法的に』でデビュー。2025年、『魔女の館の殺人』で第9回ほんタメ文学賞(たくみ部門)大賞を受賞。好きな本格作品は、小説を書き始めるきっかけにもなった綾辻行人先生の『十角館の殺人』(館シリーズ全般)。
【推薦の理由】キャラの立ったリーガルミステリ『復讐は合法的に』でこのミス大賞隠し玉からデビューした三日市さんですが、その後出版された『魔女の館の殺人』では閉鎖空間で推理ゲームが開催中に殺人が起きるという展開で、殺人事件の謎も推理ゲームの謎も両方楽しめる作品に仕上がっており、本格方面への進出が期待されるため、推薦いたします。(坂嶋竜)

[退会]

・西澤保彦 2025年11月9日 ご逝去のため(クラブより献花させていただきました)

(2025.12.05発行)

「本格ミステリ作家クラブ通信」第94号

1.第25期本格ミステリ作家クラブ総会の報告

(1)議長団の選出
会則26条「総会の議事進行は執行会議がおこなうものとする」の条項に基づき、執行会議のメンバーから以下の議長団を選任した。
議長・芦辺拓
副議長・廣澤吉泰
書記・若林踏
議長団は拍手多数をもって承認された。また議事進行において特に異議のない場合は、拍手で承認することを確認した。

(2)麻耶雄嵩会長の挨拶
2025年は本格ミステリ作家クラブ創立25周年となります。それを記念し、今年は25周年記念の書店イベント&サイン会を大阪にて行う予定です。2026年の挨拶では同イベントの成功を報告出来ればと思っております。

(3)定足数の確認、入退会者の承認
出席者29名、委任105名で、合計134名となり、正会員数の201名の半数を超えているので定足数を満たし、会則27条により総会が成立した。
続いて執行会議が承認した新入会員について議長から簡単な紹介をした後、
・柾木政宗氏
・国樹由香氏
以上2名の入会が全会一致で承認された。

(4)第24期活動報告、会計報告
太田忠司事務局長から議案書にもとづき、報告がなされた。
大山誠一郎会計担当から会計報告書にもとづき報告がされ、倉知淳監事からの代理で監査報告書を読み上げた。活動報告は規約上承認を受ける必要はないが、慣例として会計報告と合わせて承認された。 また、アンソロジー担当の関根氏より『本格王2025』の部数について報告。アンソロジー売り上げ促進のため、各会員へPRへの協力お願いがあった。

(5)第25期(25-26年)活動計画・予算案
議案書にもとづき、太田事務局長から活動計画、大山誠一郎会計担当より予算案が読み上げられ承認された。

(6)大賞贈呈式・トークショーについて
■北村一男イベント担当より報告。
・新宿紀伊国屋イベント報告(2025.06.22)
サイン会=逸木裕・新保博久・法月綸太郎、北村薫・東川篤哉・麻耶雄嵩
1作家3冊、計10冊に購入制限。20名ずつ5組の時間差集合。
当選100名中参加75名/売上冊数449冊。
『本格王2025』44冊は、サイン会対象本中もっとも売れました。歴代会長のサインカード特典は大成功です(サインカードの残りは店頭にて特典継続)。
受賞記念トークは、アーカイブ配信された。
反省点として、トークショー時のマイクトラブルへの対処が遅れ、登壇者にご迷惑をおかけしました、申し訳ありません。

(7)その他報告事項
アンソロジー担当・関根亨氏より新入会員の申し込み方法が昨年度より郵送からメールでのやり取りに切り替えたことを報告。

(8)今後の運営について ほかその他質疑応答
・10/13 のイベントについてXで告知してもよいかの質問あり→告知もOKと返答。
・会報の通番間違いの指摘有り。

2.第26期執行役員メンバー他決定

【執行会議】
会長:麻耶雄嵩
事務局長:太田忠司
監事:倉知淳
大賞運営委員:霧舎巧、福井健太、イクタケマコト
賛助会員委員:廣澤吉泰
アンソロジー担当:関根亨
書記:若林踏
サイト担当:黒田研二
イベント担当:北村一男、青柳碧人、若林踏
会計:大山誠一郎
その他の執行会議メンバー:芦辺拓、今村昌弘、小島正樹、千澤のり子、似鳥鶏、東川篤哉
【アンソロジー選考委員】
阿津川辰海(継)、乾くるみ(継)、若林踏(継)
【大賞予選委員】
稲羽白菟(継)、蔓葉信博(継)、汀こるもの(継)、孔田多紀(新)伊吹亜門(新)

3. 「第25回本格ミステリ大賞」受賞者コメント

[小説部門]『彼女が探偵でなければ』逸木裕
◎逸木裕氏のコメント
何年か前の話ですが、「ガチガチの本格ミステリを書きませんか」というオーダーをいただいたものの、どうしても書けずに諦めてしまったことがありました。館や孤島や見立て殺人、密室にアリバイ崩しに多重解決、叙述トリックにバラバラ死体に特殊設定――読者として本格ミステリを読むのは大好きで、それなりに蓄積もあるはずなのですが、作者として向き合うと全くどう書いてよいのか判らないのです。それ以来、自分は華やかな本格ミステリではなく、人間心理の謎を丁寧に紐解いていくことを目標に、地道にミステリを書いてきた認識があります。
そんな私の作品が、日本の本格ミステリの中心地ともいえる本賞で顕彰していただけるなど、書いた段階では想像すらしておりませんでした。自らの〈本格観〉がいかに狭いものだったかを反省するとともに、光を当ててくださった本格ミステリ作家クラブの皆様に心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

[評論・研究部門]『死体置場で待ち合わせ 新保博久・法月綸太郎往復書簡』』新保博久・法月綸太郞
◎新保博久氏のコメント
この本格ミステリ大賞を第1回に頂戴した『日本ミステリー事典』への自分の貢献度は一割程度と踏んでいたが、今回は晴れて五割と威張れそうで嬉しい。あと二十五年、踏ん張ればソロ受賞が叶うかしら。25年後、〝もう生きてはいまい〞(ハーバート・ブリーン)か、〝まだ死んでいる〞(ロナルド・A・ノックス)だろうが、叶わぬ望みと知りながら、それを励みに精進するだけなら不可能ではない。〝死体置場で待ちぼうけ〞に終わりませんように。
◎法月綸太郞氏のコメント
リアルのコンクラーベと同日に映画『教皇選挙』を観に行ったまさにその日に、本格ミステリ大賞の投票結果を知ることになろうとは! 二人三脚のパートナーに指名してくださった新保さんはもちろん、連載の場を設けていただいた「ジャーロ」編集部に改めて感謝いたします。出版事情は厳しさを増す一方ですが、私たちが受け取ったミステリ評論という「手紙」を持ち腐れにせず、次の世代へ送り届けていけるよう今後も精進したいと思います。

4.今後のスケジュール
・25年9月9日(火)第一回執行会議(第25回本格ミステリ大賞、総会等の反省、25周年大阪イベントの準備など)
・25年10月13日(祝)クラブ創立25周年記念イベント @大阪
・25年12月上旬 第二回執行会議(25周年イベントの反省、大賞アンケート、予選会の手筈確認など)
・25年12月上旬 第26回本格ミステリ大賞アンケート開始(Googleフォーム)
・26年1月上旬 大賞アンケート締め切り
・26年2月中旬 予選委員会
・26年2月中旬 大賞候補作発表・投票開始(Googleフォーム)
・26年2月下旬 第三回執行会議(予選委員会の反省・開票スケジュールの確認・会報確認・アンソロジー確認など)
・26年5月7日(木) 投票締め切り
・26年5月上旬 第四回執行会議(大賞発表の手筈確認など)
・26年5月11日(月) クラブ公式サイトにて大賞作発表
・26年6月中旬 アンソロジー『本格王2026』刊行
・26年6月27日(土) 第五回執行会議(総会、贈呈式の手筈確認など)
          総会、賛助会員説明会、贈呈式・祝賀会
・26年6月28日(日)大賞記念トークショー&サイン会(@芳林堂書店高田馬場店)

(2025.09.30発行)

「本格ミステリ作家クラブ通信」第93号

1.第25回本格ミステリ大賞候補作決定

【小説部門】(著者名50音順)
『彼女が探偵でなければ』逸木裕(KADOKAWA)
『伯爵と三つの棺』潮谷験(講談社)
『ぼくは化け物きみは怪物』白井智之(光文社)
『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』南海遊(星海社)
『サロメの断頭台』夕木春央(講談社)

【評論・研究部門】(著者名50音順)
『本格ミステリの構造 解析奇想と叙述と推理の迷宮』飯城勇三(南雲堂)
『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座』大矢博子(東京創元社)
『日本の犯罪小説』杉江松恋(光文社)
『ミステリから見た「二○二○年」』千街晶之(光文社)
『死体置場で待ち合わせ新保博久・法月綸太郎往復書簡』法月綸太郎・新保博久(光文社)

 第25回本格ミステリ大賞候補作決定のための予選会は2月11日に、大賞運営委員・イクタケマコト、霧舎巧、福井健太の立ち会いのもと、予選委員・稲羽白菟、織守きょうや、嵩平何、蔓葉信博、汀こるものによってリモート会議の方式で行われた。

■選考経過

【小説部門】
 予選委員が挙げた推薦作は、芦辺拓、江戸川乱歩『乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび』、逸木裕『彼女が探偵でなければ』、大島清昭『バラバラ屋敷の怪談』、倉知淳『死体で遊ぶな大人たち』、櫻田智也『六色の蛹』、潮谷験『伯爵と三つの棺』、白井智之『ぼくは化け物きみは怪物』、方丈貴恵『少女には向かない完全犯罪』、松城明『蛇影の館』、南海遊『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』、夕木春央『サロメの断頭台』、米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』の十二作品だった(著者五十音順)。
 まず予選委員全員が推薦した『永劫館超連続殺人事件』と『彼女が探偵でなければ』の二作品が候補作に決まった。『永劫館超連続殺人事件』を称える言葉が全員から発せられ、『彼女が探偵でなければ』についても否定的な意見はほとんどなく、順調な滑り出しをみせた予選会だった。続いて三票を獲得していた『伯爵と三つの棺』の検討に移ったが、同作を推薦しなかった予選委員からの賛同を得られず、候補作にするか否かは、二票を獲得している作品の検討後に併せて協議することになった。二票を得ていた作品は『少女には向かない完全犯罪』と『ぼくは化け物きみは怪物』で、それぞれの推薦理由、推薦しなかった理由を述べ合った結果、『少女には向かない完全犯罪』は賛否が分かれ、これも保留となった。一方、『ぼくは化け物きみは怪物』は既受賞者の作品であることで推薦を躊躇した委員が多かったことがわかり、作品としての個の評価を優先して候補作に決まった。このあと、一票だけ投じられていた作品について検討がおこなわれ、『サロメの断頭台』の票が『蛇影の館』に、『冬期限定ボンボンショコラ事件』の票が『伯爵と三つの棺』にそれぞれ移り、トータルで四票を獲得した『伯爵と三つの棺』が候補作に決定した。さらに、この票移動により『蛇影の館』が二票となり、先に保留となっていた『少女には向かない完全犯罪』と同票のため、どちらかを候補作にする流れになった。しかし、ほかの委員から一度推薦が取り下げられた『サロメの断頭台』を評価する声が上がり、ここから三作品についての議論が三十分に及んだ。「この作品を入れるなら、この作品のほうがいい」という三竦みのような現状を打開すべく多数決を行うと、『サロメの断頭台』に全員の手が上がり、大逆転の結末で【小説部門】の予選会は幕を閉じた。(霧舎巧)

【評論・研究部門】
 五名の選考委員が事前に推薦した作品は、千街晶之『ミステリから見た「二○二○年」』、法月綸太郎・新保博久『死体置場で待ち合わせ 新保博久・法月綸太郎 往復書簡』、飯城勇三『本格ミステリの構造 解析奇想と叙述と推理の迷宮』、篠田真由美『ミステリな建築 建築なミステリ』、杉江松恋『日本の犯罪小説』、大矢博子『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座』、飯城勇三『名探偵ガイド』、土屋隆夫『推理小説作法 増補新版』、講談社編『ミステリーツアー』、『このミステリーがすごい!』編集部編『やっぱり好き! 京極夏彦サーガ』の十作であった。
 投票修正後、満票を獲得した『ミステリから見た「二○二○年」』が候補作に決定した。本作は、新たな方法論による社会批評を展開し、現代を鋭く浮かび上がらせた点が高く評価された。
 次に、票数の多い作品について議論が行われた。『死体置場で待ち合わせ』は、両者の豊富な知識と往復書簡形式による議論の深まり、さらに読みやすさが評価された。『本格ミステリの構造解析』は、バランスの欠如や一部に疑問点が残るものの、新たな視点からの評論を提示している点が評価された。『日本の犯罪小説』は、時代背景や個人と社会の関係性、さらにはミステリ作家と犯罪小説の関連性に対する独自のアプローチが評価され、それぞれ候補作に選ばれた。一方で、『名探偵ガイド』および『ミステリーツアー』は、この時点で票を失い候補から除外された。『推理小説作法 増補新版』は増補版であることが理由で、『やっぱり好き! 京極夏彦サーガ』は、現代の読者層へのアプローチが評価されたものの、再録の多さや取り扱い作品の偏りが問題視され、候補から除かれた。
 最終的に、『ミステリな建築 建築なミステリ』と『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座』の二作について議論が行われた。前者は、建築研究の視点からミステリを論じる点が特徴的であり、ミステリファン以外の幅広い読者層の獲得が期待された。後者は、アガサ・クリスティ作品を新たな視点で紹介しつつ、入門書としての機能も果たす点が評価され、最終的に、『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座』が候補作に決定した。最後に『ミステリな建築 建築なミステリ』で「黒死館の図が見たかった」という意見があったことを付記する。(イクタケマコト)

■選評

◎稲羽白菟
 こと「本格ミステリ大賞」である以上、評価軸ははっきりしています。
 ミステリとして新しい発明があること。あるいは、現在までのミステリの到達点を更に前進させる工夫・技巧があること。そして、それらミステリの要素が、その作品・作者にしか実現できないレベルで「小説」として錬成・完成されていること。
 僕なりに厳格な基準で推薦した五作のうち、二作は他に候補を譲る結果となりましたが、出揃った最終候補五作をあらためて眺めると、それぞれに違った特徴と魅力ある良いラインナップを提示することができたように思います。読み比べ甲斐のある意欲作が揃いました。
 評論・研究部門はほぼ僕の推薦に違わぬ選定となりました。射程広く、示唆深く、しかし読み易い名著が今年はズラリ揃いました。作家諸氏も是非ご査読を。いつも小説が評されているように、評論・研究もまた、書き手側から折々厳粛に評されねばならぬのです。

◎織守きょうや
 アンケート結果を反映しつつ、まだ発見されていない・十分に評価されていない作品にもスポットを当てたい、という思いで臨みました。小説部門は、最初から推していた『永劫館』『彼女』『伯爵』を候補にできたのが嬉しいです。チャレンジングな特殊設定ミステリ『蛇影の館』も推しましたが、こちらは後半票を集めたものの惜しいところで落選。とはいえ5作とも、個人的に楽しく読めた作品が候補となり満足しています。評論部門は、純粋に評論・研究として優れているものを評価すべきか、候補作全体としてのバランスも考えて選ぶべきか悩み、自分の推薦作の段階ではバラエティを意識して5作を選びましたが、予選会で皆さんの考えを聞き、票を移動させました。タイプは違えど、優れた評論・研究書である5冊が候補になったと思います。いずれの部門も、何を評価基準とするかに委員それぞれの考えがあり、選考の難しさを実感しましたが、楽しく勉強になりました。

◎嵩平 何
【小説部門】四作までは比較的順当に決まるも、最後の一作を巡っては様々な意見のぶつかり合いとなった。弱点があるのは重々承知しつつも、超高難度のプロットをギリギリのバランスで築き上げた『少女には向かない完全犯罪』を私は推していたが、最終的に全員が高い評価を与えた作品が候補になったのは納得の結果である。今回議題に挙がった作品の全てが優れた作品で、各々が推すポイントが異なるがゆえに、議論だけで候補作を決めることの難しさも痛感した選考であった。
【評論・研究部門】こちらもまた最後の一枠を巡って争ったが、別の予選委員の教示もあって、よくも悪くもすんなりと決定した。評論・研究とそれ以外の周辺書、増補版などを巡る話題が出たのは有益であった。本格ミステリ論ではないものの、ミステリジャンルの軸を見据えることで、本格の輪郭を鮮明にし、その理解を深める『日本の犯罪小説』が候補となったのはとても良かったと思う。

◎蔓葉信博
 ここ数年、本格ミステリの小説シーンにまた変動が起きているのではと考えていたこともあり、アンケートの結果を踏まえ、ほかの予選委員の方々の鋭い意見に耳を傾けようと予選会に臨みました。しかし、スムーズにある程度候補作が決定したのち、熱く議論が交わされることになったのは「作家の力量」という問題でした。作品単体の評価とは違うバイアスであるものの、一方でその作家ごとの可能性というメタ的な評価軸も歴然とあり、その話し合いにかなりの時間を割きました。
 それは評論部門も同様で、それらの背景には「会員の方々に読んでもらいたい」という願いと、本格シーンをいかに盛り上げるかというこちらもメタ的な評価軸がありました。これらは選考委員として参加したからわかったことで、実に新鮮な驚きでした。選考の結果にはこうした背景があることを知っていただければと、別の角度での選評を述べさせていただきました。

◎汀こるもの
 やっぱり強い、特殊設定と多重推理、『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』。『彼女が探偵でなければ』『ぼくは化け物きみは怪物』もすんなりと決まりました。…… その後があんなに紛糾するならアンケートで自分一人しか推してなかった『切断島の殺戮理論』で殴り込みをかけた方がよかったのかな。いやお前の趣味ってだけじゃ無理だよ。本格ミステリ大賞には世論に拠らない新しい血が必要である、それはわかるんだけど……苦渋の決断でした。
 「そもそも評論・研究とは何ぞや?」というのは今後もつきまとう命題なのでしょうね。『ミステリな建築建築なミステリ』、いい本だとは思うんだけど評論・研究としては一味足りないということで『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座』に票を移しましたが、自分でも「入門できそう」はないだろうよ……精進します。

【候補作アンケート】

40通
*31→33→42→36→35→37→30→30→27→30→27→39→36→34→31→36→40 ※昨年より増。

【アンケート結果】

◎小説部門(著者50音順)
『有栖川有栖に捧げる七つの謎』青崎有吾ほか(文春文庫)
『乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび 』芦辺拓・江戸川乱歩(KADOKAWA)
『黄土館の殺人』阿津川辰海(講談社タイガ)
『バーニング・ダンサー』阿津川辰海(KADOKAWA)
『僕たちの青春はちょっとだけ特別』雨井湖音(東京創元社)
『日本扇の謎』有栖川有栖(講談社)
『牢獄学舎の殺人 未完図書委員会の事件簿』市川憂人(星海社)
『彼女が探偵でなければ』逸木裕(KADOKAWA)
『帝国妖人伝』伊吹亜門(小学館)
『明智恭介の奔走』今村昌弘(東京創元社)
『バラバラ屋敷の怪談』大島清昭(東京創元社)
『にわか名探偵 ワトソン力』大山誠一郎(光文社)
『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』おぎぬまX、監修:ゆでたまご(集英社)
『大樹館の幻想』乙一(星海社)
『継母の連れ子が元カノだった 11 どうせあなたはわからない』紙城境介(角川スニーカー文庫)※ 2023年12月刊のため対象外
『さかさ星』貴志祐介(KADOKAWA)
『案山子の村の殺人』楠谷佑(東京創元社)※2023年11月刊のため対象外
『死体で遊ぶな大人たち』倉知淳(実業之日本社)
『崑崙奴』古泉迦十(星海社)
『法廷占拠 爆弾2』呉勝浩(講談社)
『私はチクワに殺されます』五条紀夫(双葉文庫)
『そして誰もいなくなるのか』小松立人(東京創元社)
『シニカル探偵安土真④ 呪いの音楽堂』齊藤飛鳥(国土社)
『毒入り火刑法廷』榊林銘(光文社)
『六色の蛹』櫻田智也(東京創元社)
『伯爵と三つの棺』潮谷験(講談社)
『ぼくは化け物きみは怪物』白井智之(光文社)
『ファイナル・ウィッシュ ミューステリオンの館』西澤保彦(星海社)
『賊徒、暁に千里を奔る』羽生飛鳥(KADOKAWA)
『VR浮遊館の謎 探偵AIのリアル・ディープラーニング』早坂吝(新潮文庫nex)
『室蘭地球岬のフィナーレ』平石貴樹(光文社)
『少女には向かない完全犯罪』方丈貴恵(講談社)
『蛇影の館』松城明(光文社)
『バイバイ、サンタクロース 麻坂家の双子探偵』真門浩平(光文社)※2023年12月刊のため対象外
『ぼくらは回収しない』真門浩平(東京創元社)
『闇に消えた男 フリーライター・新城誠の事件簿』深木章子(角川文庫)
『紫式部と清少納言の事件簿』汀こるもの(星海社)
『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』南海遊(星海社)
『セント・アグネスの純真 花姉妹の事件簿』宮田眞砂(星海社)
『切断島の殺戮理論』森晶麿(星海社)
『禁忌の子』山口未桜(東京創元社)
『難問の多い料理店』結城真一郎(集英社)
『サロメの断頭台』夕木春央(講談社)
『冬期限定ボンボンショコラ事件』米澤穂信(創元推理文庫)

◎【評論部門】
『阿津川辰海読書日記 ぼくのミステリー紀行〈七転八倒編〉』阿津川辰海(光文社)
『本格ミステリの構造解析 奇想と叙述と推理の迷宮』飯城勇三(南雲堂)
『名探偵ガイド』飯城勇三(星海社新書)
『島ミス350選(国内作家編)』市川尚吾(探偵小説研究会)
『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座』大矢博子(東京創元社)
『大量死と探偵小説』笠井潔(星海社新書)
『小説編集者の仕事とはなにか?』唐木厚(星海社新書)
『ミステリーツアー』講談社・編(講談社)
『ミステリーアイランド』講談社・編(講談社)
『松本清張はよみがえる 国民作家の名作への旅』酒井信(西日本新聞社)
『ミステリな建築 建築なミステリ』篠田真由美・長沖 充(エクスナレッジ)
『日本の犯罪小説』杉江松恋(光文社)
『ミステリから見た「二〇二〇年」』千街晶之(光文社)
『写楽ブームの正体』高井忍(行舟文化)
S・S・ヴァン・ダイン『グリーン家殺人事件』解説 巽昌章(創元推理文庫)
エラリー・クイーン『Zの悲劇』解説 巽昌章(創元推理文庫)
『推理小説作法 増補新版』土屋隆夫(中公文庫)
『アパートの鍵貸しますビリー・ワイルダー&I・A・L・ダイヤモンド/町田暁雄訳(論創社)
『死体置場で待ち合わせ 新保博久・法月綸太郎往復書簡』法月綸太郎・新保博久(光文社)
『「砂の器」と木次線』村田英治(ハーベスト出版)※2023年12月刊行のため対象外
『探偵小説の鬼 横溝正史 謎の骨格にロマンの衣を着せて』山口直孝監修(平凡社)
『やっぱり好き! 京極夏彦サーガ』『このミステリーがすごい!』編集部・編(宝島社)※予選委員推薦作

2.今後の予定

5月07日(水) 投票締切
5月09日(金) 第25回本格ミステリ大賞発表 クラブ公式X
6月21日(土) 総会&贈呈式 @都内某所
6月22日(日) 受賞記念イベント&サイン会 @紀伊國屋新宿本店(東京・新宿)
10月13日(祝 クラブ25周年記念イベント @OIT梅田タワー 紀伊國屋梅田本店(大阪・梅田)
※日程は暫定的なものです。

(2025.02.28発行)

「本格ミステリ作家クラブ通信」第92号

1.第25期総会・第25回「本格ミステリ大賞」贈呈式までのスケジュール

・12月3日(火)第2回執行会議
・12月6日(金)推薦作アンケートフォーム(Googleフォーム)を配布
・1月8日(水)アンケート〆切(郵送の場合は消印有効)
・2月11日(火・祝)候補作選考委員会(オンライン)
 予選委員=稲羽白菟、織守きょうや、嵩平何、蔓葉信博、汀こるもの(五十音順)
 大賞運営委員=霧舎巧、福井健太、イクタケマコト
・2月12日(水)候補作家の承諾確認後、候補作発表
・2月下旬候補作の選考経過と本選投票フォーム(Googleフォーム)を配布
・5月7日(水)投票〆切
・5月9日(金)クラブ公式サイトにて大賞発表
・6月21日(土)総会・贈呈式パーティ
・6月22日(日)受賞記念トークショー&サイン会(紀伊國屋新宿本店、詳細未定)
・10月19日(日)クラブ創立25周年記念トークショー(紀伊國屋梅田本店、詳細未定)

4.新規会員紹介

・青鳥の如き囀るもの(喜国雅彦/関根亨 推薦)
【職業】「身に着ける暗号ブランドPUZZLE」代表
【自己紹介】東京都出身。1986年生。幼少期から「名探偵」というヒーローに憧れるミステリファン。綾辻行人作品や、島田荘司作品など、あっと驚く大掛かりなギミックが仕掛けられた作品が好み。ハンドルネームの由来は、三津田信三『刀城言耶シリーズ』から。
 2023年、ミステリファンだけがデザインの意味に気付ける、ユニークなブランド「身に着ける暗号ブランドPUZZLE」を展開。
 第1弾、綾辻行人『十角館の殺人』をモチーフにしたTシャツとトートバッグの販売を開始し、クラウドファンディングで達成率661%を記録。
 その後、第2弾として島田荘司『斜め屋敷の犯罪』のTシャツを販売。
 さらに、2024年夏には、講談社文庫フェア「ミステリー頂上決戦」とコラボレーションし、賞品の企画とデザインを担当。
 https://728puzzle.base.shop/
【推薦の理由】喜国雅彦
青鳥さんは作家ではありませんが、本格ミステリが好きなあまり、出版社とタイアップして作品のグッズ展開を行なったり、文学フリマに出品したりと、作家とはひとあじ違った活動を行なっている方です。またYouTubeなどの動画サイトで、本格ミステリの布教につとめておられ、これからの会の発展に力を貸してくれると感じました。

(2024.12.06発行)

「本格ミステリ作家クラブ通信」第91号

1.第24期本格ミステリ作家クラブ総会の報告

(1)議長団の選出
会則26条「総会の議事進行は執行会議がおこなうものとする」の条項に基づき、執行会議のメンバーから以下の議長団を選任した。
議長・芦辺拓
書記・若林踏
議長団は拍手多数をもって承認された。また議事進行において特に異議のない場合は、拍手で承認することを確認した。

(2)麻耶雄嵩会長の挨拶
クラブ会長として2年目の任期になりますが、今年も本格ミステリ大賞贈呈式およびパーティーを無事開催することが出来て嬉しく思います。翌日の書店での記念イベントも含め、今後もクラブの目玉イベントとして続けていければ良いと思っております。

(3)定足数の確認、入退会者の承認
出席者32名、委任92名で、合計124名となり、正会員数の201名の半数を超えているので定足数を満たし、会則27条により総会が成立した。
続いて執行会議が承認した新入会員について議長から簡単な紹介をした後、
・潮谷験
・三島政幸
・笛吹太郎
・南海遊
・猫森夏希
以上5名の入会が全会一致で承認された。
また、巽昌章氏の退会が報告された。

(4)第24期活動報告、会計報告
太田忠司事務局長から議案書にもとづき、報告がなされた。
大山誠一郎会計担当から会計報告書にもとづき報告がされ、法月綸太郎監事からの代理で監査報告書を読み上げた。活動報告は規約上承認を受ける必要はないが、慣例として会計報告と合わせて承認された。

(5)役員改選について 市川憂人と嵩平何選挙管理委員より報告。
執行会議に提出された立候補および推薦用紙の内容を確認し、この立候補および推薦が会則に沿った正当なものであることを確認。また、推薦を受けた候補者が申請を受ける意思があることも確認された。

(6)本格ミステリ大賞選考について
太田事務局長よりグーグルフォームでの投票については今後も継続していきたい旨を説明。会場からは特に異議はなく承認された。

(7)大賞贈呈式・トークショーについて
若林踏イベント担当より報告。
・6月23日(日)銀座教文館にてオンライントークショー(youtubeにて無料配信)およびサイン会を開催。トークショーには第24回受賞者の青崎有吾氏、川出正樹氏が出演(司会:若林踏)。サイン会には受賞者2名に加え、麻耶会長、太田事務局長、青柳碧人イベント担当が参加。
・クラブ設立25周年イベントについて。2025年6月22日(日)に紀伊国屋書店新宿本店での開催と、同年10月19日(日)に紀伊国屋書店梅田本店での開催が決定。詳細は決まり次第、随時報告予定。
※会員の千澤氏よりイベント会場について協力可能との意見も有りました。

(8)第24期(24年)活動計画・予算案
議案書にもとづき、太田事務局長から活動計画、「25周年に合わせた企画について何か案があれば是非いただきたい」とのお願い有り、大山誠一郎会計担当より予算案が読み上げられ承認された。

(9)その他報告事項
アンソロジー担当・関根亨氏より新入会員の申し込み方法変更について報告された。従来の郵送からメールでのやり取りに期中から切り替えたことを報告。

(10)今後の運営について
今後の運営に関する質疑応答はなく、拍手をもって総会は終了した。

2.第25期執行役員メンバー他決定

【執行会議】
会長:麻耶雄嵩
事務局長:太田忠司
監事:法月綸太郞
大賞運営委員:霧舎巧、福井健太、イクタケマコト
賛助会員委員:廣澤吉泰
アンソロジー担当:関根亨
書記:若林踏
サイト担当:黒田研二
イベント担当:北村一男、青柳碧人、若林踏
会計:大山誠一郎
その他の執行会議メンバー:芦辺拓、今村昌弘、小島正樹、千澤のり子、東川篤哉
【アンソロジー選考委員】阿津川辰海(継)、乾くるみ(新)、若林踏(継)
【大賞予選委員】織守きょうや(継)、嵩平何(継)、稲羽白菟(新)、蔓葉信博(新)、汀こるもの(新)

3.「第24回本格ミステリ大賞」受賞者コメント

[小説部門]『地雷グリコ』青崎有吾
◎青崎有吾氏のコメント
たとえ狭義の「謎解き」に属さなくても、論理と逆転によって私たちに「なるほど」と感じさせてくれるものは、悉く本格推理なのではないか。
そんな思いが年々強まり、けれどうまく説明できず、一度形にしてみたくて書いたのが『地雷グリコ』というゲーム連作です。
本の帯からは「ミステリ」という惹句をあえて外しました。自分なりのフェアプレイのつもりでした。
しかし結果として、多くの方に本格ミステリとして評価していただき、栄えある賞を賜ったことをとても嬉しく思います。
これからも自分が面白いと思うものを、読者に納得してもらえるような形で書いていきたいです。

[評論・研究部門]『ミステリ・ライブラリ・インベスティゲーション 戦後翻訳ミステリ叢書探訪』川出正樹
◎川出正樹氏のコメント
『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 戦後翻訳ミステリ叢書探訪』は、戦後に編まれた翻訳ミステリの叢書・全集の中から個性的なものを探訪して編纂意図や収録作品などを調査した研究書兼ブックガイドであり、同時に自らの体験を交えつつ日本で海外ミステリがどのように受容され浸透していったかを眺め考察したクロニクルでもあります。「謎と解明さえあればミステリ」という緩く幅広いミステリ観の持ち主なので、本格物のみを取り上げているわけではありません。にもかかわらず本格ミステリ大賞を受賞できたのは、本を巡る探訪という行為が、ミステリの本質である謎の解明に通じると認めて頂いた結果ではないかと推理しました。本格ミステリ作家クラブ会員の皆様の懐の深さに感謝する次第です。ありがとうございました。

5.今後のスケジュール

10月22日(火)第一回執行会議(第24回本格ミステリ大賞、総会等の反省など)
12月上旬 第二回執行会議(大賞アンケート、予選会の手筈確認など)
     第25回本格ミステリ大賞アンケート開始(Googleフォーム)
25年1月上旬 大賞アンケート締め切り
2月中旬 予選委員会
2月中旬 大賞候補作発表・投票開始(Googleフォーム)
2月下旬 第三回執行会議(予選委員会の反省・開票スケジュールの確認・会報確認・アンソロジー確認など)
5月7日(水) 投票締め切り
5月上旬 第四回執行会議(大賞発表、総会、贈呈式の手筈確認など)
5月9日(金) クラブ公式サイトにて大賞作発表
6月中旬 アンソロジー『本格王 2025』刊行
6月21日(土) 第五回執行会議(総会、贈呈式の手筈確認など)
      総会 賛助会員説明会 贈呈式・祝賀会
6月22日(日)大賞記念&クラブ創立25周年記念トークショー(紀伊国屋新宿本店)
10月19日(日)クラブ創立25周年記念トークショー(紀伊国屋梅田本店)

(2024.10.31発行)